進む、木造建築
この10年間で、公共建築物(全国)は低層の建築物を中心に増加しており、平成22(2010)年の17.9%から令和元(2019)年の28.5%まで上昇しました。地域や年によりばらつきがあるものの、4割を超える県もあります。また、各地で、木材をふんだんに用いた図書館、公民館、学校等が建設されており、利用する多くの人々に、木材利用の重要性や木の良さを伝えています。
さらに、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行も背景に、木質耐火部材の開発、木造建築物の防耐火に係る基準の合理化、さらに低コスト・短工期での建設を可能にする部材や工法の開発が進んだことで、民間建築物においても木材利用に対する気運が高まってきています。
■建築物全体と公共建築物の木造率の推移(全国平均)
■建築物全体
■うち公共建築物
■うち低層の公共建築物
注1:国土交通省「建築着工統計調査2019年度」のデータを基に林野庁が試算。
注2:木造とは、建築基準法第2条第5号の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)に木材を利用したものをいう。
注3:木造率の試算の対象には住宅を含む。また、新築、増築、改築を含む(低層の公共建築物については新築のみ)。
注4:「公共建築物」とは国及び地方公共団体が建築する全ての建築物並びに民間事業者が建築する教育施設、医療・福祉施設等の建築物をいう。
資料:林野庁プレスリリース「令和元年度の公共建築物の木造率について」(令和3年3月26日付け)
出典:林野庁「令和2年度 森林・林業白書」
木取りのキホン
原木や大型の木材から、必要な寸法・品質の木材を製材することを「木取り」と言います。曲がり、断面形状、節、割れなど、丸太の形状や欠点を考慮して、いかに歩留まりをよくするかを考えながら必要な寸法や品質の木材を取り出していきます。
■ 製材
丸太から角材や板材を直接切り出したもので、無垢材とも呼ばれます。構造材、下地材、造作材など多様な用途とそれに応じた形状があります。
■ 集成材
ラミナと呼ばれる断面寸法の小さい板材を繊維方向に揃えて、厚さ・幅及び長さ方向に接着剤で貼り合わせた木材です。
■ 合板
薄く切った単板(ベニヤ)を繊維方向に直交させながら積み重ねて、熱圧着や接着剤で貼り合わせた板です。
■ CLT
板状に製材・乾燥した板(ひき板)を繊維方向が直交するように重ねて接着した、板状の材料です。厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、造作材、家具などにも使用されています。
強度性能について
県産スギに比べ、能登ヒバの方が縦圧縮、曲げ、せん断、めり込みの各強度性能が高いと言えます。
もちろん県産スギ、能登ヒバも、ともに国土交通省が定める製材の基準強度(無等級材)を上回っており、建築用部材として問題なく使用できます。
■ 国土交通省の告示で定める基準強度(平成12年5月31日建築省告示第1452号)
無等級材(JASに定められていない木材)の基準強度
※ここで紹介する石川県産スギの実証試験値は、令和2年10月現在の強度データを参考に記載したものです。今後もサンプル数の増加にともなって数値は変動しますので、ご了承ください。また、個別に部材の性能を保証・担保するものではありません。
木材の等級について
木材の等級は、無節、上小節、小節、並(特一等)と、見た目の良し悪しで分けられます。並は、等級としては最も低いものですが、目に見えない場所に使う構造材や下地材に使用されます。節を活かしたデザインなど、活用方法は様々に広がっています。
造作材(羽目板)の場合の等級
JAS構造材
JAS 構造材は、品質・性能がしっかりと表示されている木材です。 木材の品質・性能・大きさ・形状などは「JAS 規格制度※」によって一定の基準が定められています。 つまり、JAS マークが付いている木製品は、厳格な審査・管理によって安定した品質・性能を保っていることが証明されています。
木造建築に品質・性能が明確なJAS製品を使っていただくことで、商業・公共施設、集合住宅等、中高層の木造建築でも安心して設計、建築していただくことが可能です。地域の活性化をはかり、地球温暖化の主因である大気中の二酸化炭素を固定する木材の需要拡大による「木の街づくり」は低炭素社会及びSDGsに大きく貢献します。
※「JAS 規格制度」とは、農林水産大臣が制定した「日本農林規格(JAS 規格)」に基づく品質検査方法・生産方法・流通方法などの基準を満たす商品(飲料食品や林産物など)に対してのみ、JAS マークを付けることが認められている任意の制度です。
林野庁では、構造部材に“品質や性能が明確で構造計算が可能な”JAS 構造材を活用する非住宅建築物に対して、構造材の調達費の一部を助成する事業を実施しています。
JAS構造材利用拡大事業
合法木材
世界の森林から違法に伐採された木材の流通が問題となっています。これは輸出国における森林減少など地球環境の破壊につながるだけではなく、違法に生産された不当に安い木材製品により輸入国の林業や木材産業に大きな打撃を与える深刻な問題です。日本では、法令による正しい手続きで生産された「合法木材」の積極的な利用を呼びかけてきました。「合法木材推進マーク」はこの活動を推進するためのマークです。
2016年5月には「クリーンウッド法」が制定され、民間事業者に対しても、政府調達で求められている合法的に伐採された木材の利用に努めることが求められることとなりました。合法性の確認を適正に実施する木材業者をはじめとして同様の取組を行う建築、家具製造、製紙などの事業者を「登録木材関連事業者」にに対して、木材関連事業者の登録を呼びかけています。